結論:裁断スキャンは事実だが、希少本の破壊は確認されていない
裁判資料は、Anthropicが数百万冊の紙の本を購入し、製本を外して全ページをスキャンし、検索可能なPDFへ変換した後に紙の原本を廃棄したと認定しています。一方、公開資料には初版本、絶版本、希少本を破壊したとの記載はありません。
裁判資料で確認できること
- Anthropicは数百万ドルを使い、数百万冊の印刷書籍を購入した。
- 書籍は中古品を含み、大量購入された。
- 製本を外し、ページを分離して高速スキャンした。
- 画像と機械可読テキストを含むPDFを作成した。
- 変換後の紙の原本は廃棄し、デジタル版を社内ライブラリーに保存した。
地裁は、購入した1冊をデジタル版1部に置き換え、紙の原本を保持・再販売しない形式変換について、限定された理由でフェアユースと判断しました。
「希少本が失われた」は懸念であり、確認済みの被害ではない
古書業界からは、大量購入が続けば専門書や絶版本の供給と価格へ影響し得るとの懸念があります。しかし、Anthropicが希少本、初版本、現存数の少ない本を購入・裁断したと特定できる資料は、今回確認した裁判命令にはありません。
「希少本を大量破壊した」と断定するのは資料の範囲を超えます。正確には「大量の書籍を破壊スキャンしたことは確認済みで、希少本が含まれた可能性を古書関係者が懸念している」です。
紙の本のスキャンと海賊版取得は法的に分けて扱われた
| 行為 | 裁判上の扱い | ポイント |
|---|---|---|
| 購入した紙の本を裁断・デジタル化 | フェアユース | 紙1部をデジタル1部へ置換し、原本を廃棄 |
| 書籍を使ったLLM学習 | フェアユース | 出力側の個別侵害まで一括で免責した判断ではない |
| LibGen・PiLiMiからのダウンロード | フェアユースではない | 中央ライブラリー構築目的の海賊版取得 |
| 15億ドルの集団訴訟和解 | 2026年7月20日に最終承認 | 対象作品の過去の取得・複製に関する請求 |
15億ドル和解は「本を裁断した罰金」ではありません。和解クラスは、AnthropicがLibGenまたはPiLiMiからダウンロードした作品リストの権利者を対象としています。
判決と和解の時系列
- 2024年:作家らがAnthropicを提訴。
- 2025年6月23日:地裁がAI学習と購入本の形式変換をフェアユースと判断し、海賊版ライブラリー取得は認めず。
- 2025年:当事者が15億ドル以上の和解に合意。
- 2026年7月20日:Araceli Martínez-Olguín判事が和解を最終承認し、判決を入力。
7月27日承認とする記事がありますが、最終承認命令の日付は7月20日です。
AI企業が紙の本を求める理由
紙の本は、ウェブだけでは得にくい長文、専門分野、編集済み文章を含みます。また、2022年以前の書籍は近年の生成AI文章が混入しにくいという利点があります。ただし、品質上の利点と、資料保存・権利処理・市場への影響は別に評価する必要があります。
Elon Musk氏は希少本を非破壊で保存する方針を投稿
Musk氏は7月27日、SpaceXAIチームへ、図書館の希少本を保存し、背表紙を切る方法ではなく手間のかかる方法でスキャンするよう依頼したとXへ投稿しました。ただし、これは自社方針の表明であり、Anthropicが希少本を破壊した証拠にはなりません。