Claude Code実践ガイド

Claude Codeのセルフホスト実行環境とは

2026年8月、Claude Codeにセルフホスト実行環境がパブリックベータで追加されました。ひとことで言うと、クラウドセッションの「実行場所」を自社のインフラに移す機能です。ブラウザやスマホから始めたセッションが、Anthropicのサーバーではなく自社ネットワーク内のマシンで動くようになります。社内のデータベースやレジストリに触れる必要がある組織、コードを自社インフラに留めたい組織のための仕組みです。

このサイトは Anthropic や Claude の公式サイトではありません。Claudeの基本的な使い方、ChatGPTとの違い、文章作成・長文整理・仕事での活用を初心者向けに整理する非公式ガイドです。機能・料金・提供状況は変更される可能性があるため、重要な判断ではAnthropic公式情報も確認してください。

何が変わるのか──「どこで動くか」の話

まず前提として、Claude Codeのセッションには動く場所が2種類あります。ターミナルやIDEで始めたセッションは常に自分のマシンで動きます。一方、claude.ai・モバイルアプリ・デスクトップアプリ・定期実行から始めたクラウドセッションは、既定でAnthropicのインフラで動きます。

セルフホスト実行環境は、この後者の実行場所だけを自社に移すものです。開発者から見た使い勝手はほぼ変わりません。セッション開始画面に環境の選択肢が増え、そこで自社の環境を選ぶだけです。

ターミナルでしか使っていないなら、設定するものは何もありません。クラウドセッションを使っていない組織には関係のない機能です。使う場所ごとの違いはClaude Codeを使う場所の整理にまとめています。

Remote Controlとの違い──混同しやすい2つ

「自分のマシンで動かして外から操作する」機能としてRemote Controlがあり、これと混同されがちです。目的がまったく違います。

セルフホスト実行環境Remote Control
誰のための機能か組織個人
動く場所組織が用意したサーバー群自分の作業マシン
対象プランTeam / EnterprisePro / Max / Team / Enterprise
解決すること社内リソースへの到達・コンプライアンス外出先から自分の作業を続ける
用意するものランナーを動かすホスト群コマンド1つ

「常時稼働の自分のマシンで動かして他デバイスから操作したい」だけならRemote Controlで足ります。セルフホストは、組織としてインフラを持つ覚悟がある場合の選択肢です。

使う前に確認すべき条件

対象プランに入っていても、条件を満たしていないと使えません。

  • Team / Enterprise プラン限定。パブリックベータです
  • 既定はオフ。OwnerまたはadminがClaude.aiの管理設定「Cloud environments」ページで有効化する必要があります
  • Claude Code on the web が組織で有効になっていることが前提です
  • Zero Data Retention を有効にしている組織は使えません
  • 推論はAnthropic APIを直接使います。Amazon Bedrock、Google CloudのAgent Platform、Microsoft Foundry、LLMゲートウェイ経由にはできません
  • リポジトリのチェックアウトはGitHubからです
  • Claude Tag、Claude Security、Code Review のセッションは対象外です(今後対応予定)

4番目と5番目は特に注意してください。すでにBedrockやVertex経由でClaudeを使っている組織は、この機能とは併用できません。クラウド課金に寄せている場合、判断が変わります(Bedrock・Vertex経由の構成)。

3つの構成要素と通信の向き

要素実体
Environment(環境)セッションの宛先になる名前付きのグループ。claude.aiの管理設定で作る
Runner(ランナー)自社ホストで動かすプログラム。セッションを実際に実行する。CIのセルフホストランナーと同じ考え方
Session(セッション)開発者が始めた1つのタスク。ランナーが子プロセスとして起動する

流れはこうです。開発者がクラウドセッションを開始して自社環境を選ぶ → Anthropic側のキューに載る → 空いているランナーが取りに行く → リポジトリをクローンしてClaude Codeを起動する。

セキュリティ上いちばん重要な点は、通信がすべて自社からの外向きだということです。ランナーがキューを取りに行き、セッションがイベントを送り出す。Anthropic側から社内へ入ってくる接続はありません。受信ポートを開ける必要がないので、稟議での説明がしやすい設計になっています。

なお企業のプロキシ環境にも対応しており、HTTPS_PROXY などの環境変数が効きます。ただしセッションのストリーミングはSSEなので、レスポンスをバッファリングするプロキシがあると動きません。

セットアップの流れ

最小構成なら1台のホストにランナーを1つ立てるだけです。

  1. ホストを用意する──LinuxまたはmacOS。Windowsはランナーのホストとして非対応で、使う場合はLinuxコンテナで動かします。Git 2.24以降が必要で、時計が5分以上ずれていると認証に失敗するのでNTPを効かせておきます
  2. Claude Codeを v2.1.224 以降にする──それより古いと self-hosted-runner というサブコマンド自体を認識しません。claude self-hosted-runner --help で使い方が表示されれば準備完了です(更新方法
  3. 環境を作る──管理設定のCloud environmentsページで作成します。このとき表示される環境キーは一度しか表示されず、後から取得できません。有効期限は365日です
  4. ランナーを起動する──ガイド付きの claude self-hosted-runner setup が用意されています。手動なら環境シークレットをファイルに書いて claude self-hosted-runner --environment-secret-file ... --base-dir ... で起動します
  5. セッションを流す──claude.ai/code でセッションを開始し、環境ピッカーから自社環境を選びます

実行中のセッションには、別のマシンからでも claude -p "メッセージ" --cloud <セッションID> で追加指示を送れます。

運用前に決めておくこと

ここを知らずに始めると、台数の見積もりを外します。

  • 1つのランナーは同時に1ユーザーしか担当しません。最初のセッションを取った時点でそのユーザーにロックされます。つまり最小の台数=同時に使う人数です。ユーザー間でチェックアウトしたコードが混ざらないための設計です
  • ランナーは仕事が終わると自分で終了します(既定)。本番ではKubernetesなどのオーケストレーターの下で動かし、終了したら新しいディスクで再起動させる形が想定されています
  • Fixed と On-demand の2通りがあります。自分でランナーを立てて維持し続けるか、キューに応じて自動で起動する仕組み(autoscaling orchestrator)を別途動かすかです
  • スポットインスタンスなど、予告なくホストが消える環境では --retire-at を使います。指定した時刻の少し前にセッションを解放させ、別のランナーで再開できるようにする仕組みです。これを使わないと、ホストの停止がクラッシュと区別できません
  • ランナーが約60秒応答しないと、セッションは別のランナーへ回されます

自社に残るもの・Anthropicへ行くもの

コンプライアンス面での説明で必ず問われる部分なので、正確に整理します。

自社インフラに残るAnthropicへ送られる
リポジトリのチェックアウト会話の内容(プロンプト・応答・ツールの結果)
ビルド成果物セッションのトランスクリプト(他の端末から再開するため保存されます)
シークレット
セッションが作成・変更したファイル

「コードが一切外に出ない」わけではありません。推論のために会話の内容はAnthropicのAPIへ送られます。移るのは実行の場所であって、制御の仕組み(キューイングやclaude.aiの画面)もAnthropic側のままです。ここを曖昧にしたまま稟議に出すと、後で覆ります。データの扱いについての一般的な整理は法人導入のページにまとめています。

なお課金は通常のクラウドセッションと同じで、組織のClaude Code利用枠を消費します。自社インフラで動かすからといって利用枠が減らないわけではありません。

向いている組織・向いていない組織

向いている向いていない
社内ネットワークのDBやレジストリにセッションから触れたいクラウドセッションを使っていない(ターミナル中心)
独自のコンパイラ・SDK・社内CLIを事前に入れておきたいBedrock・Vertex・LLMゲートウェイ経由で使っている
チェックアウトとビルド成果物を自社に留める要件があるZero Data Retentionを有効にしている
インフラを運用する担当を置ける運用の担当を割けない

公式ドキュメント自身が「ほとんどのチームはAnthropicホストの環境の方が適している」と明記しています。ランナーのイメージを作り、フリートを運用し、ネットワークを管理する負担が発生するためです。要件が先にあって選ぶ機能であって、新しいから試すものではありません。

FAQ

個人プラン(Pro / Max)でも使えますか?

使えません。Team / Enterprise 限定です。個人で「自分のマシンで動かして外から操作する」ことが目的なら、Pro / Max でも使えるRemote Controlが該当します。

コードが外部に出なくなりますか?

いいえ。リポジトリのチェックアウトやビルド成果物は自社に残りますが、会話の内容は推論のためAnthropicのAPIへ送られます。移るのは実行の場所であって、すべてが社内で完結するわけではありません。

ランナーは何台必要ですか?

1つのランナーは同時に1ユーザーしか担当しないため、最低でも同時に使う人数分が必要です。キューに応じて自動で増やす運用も用意されています。

Windowsサーバーで動かせますか?

ランナーのホストとしてWindowsは非対応です。Linuxコンテナ内で動かしてください。なお開発者側の端末は影響を受けません(セッションはブラウザから開始するため)。